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このページは完全にネタバレになりますので、作品をご覧になった後にお読みになった方がいいです。
『ほしのこえ』の視聴前の方向けの情報は、当サイトの名作アニメ・名作映画のページにあります。視聴前にはそちらをご覧になることをおすすめします。


ほしのこえ 作品解説

 仙人

時間

25分

題名について

日本語版の題名は『ほしのこえ the voices of a distant star』ですが、英語版の正式な題名は『Voices of a Distant Star』です。新海誠の作品は時々英語がおかしいので、ちょっと気になります。予告編では、英語の副題が『The Voices of Distant Star』となっていて、冠詞の「a」が抜けていました。些細なことで、どうでもいいのですが、これは少しおかしいですね。

作品のあらすじ

中学3年生の長峰美加子(ながみね みかこ)は、国連軍のロボット「トレーサー」のパイロットになり、地球人の調査隊を襲った宇宙人タルシアンを追って、宇宙に行くことになる。そのため、同級生の友達、寺尾昇(てらお のぼる)と別れ別れになり、携帯のメールで連絡を取り合うが、地球からの距離が離れるにつれ、メールが届くのに時間がかかるようになる。美加子は冥王星付近で初めてタルシアンと遭遇し、戦闘になる。その後、タルシアンを追って、シリウスに行くことになる。シリウスに行ってしまうと、メールが地球に到達するのに8年もかかるようになる。こうして、美加子と昇は引き裂かれていく。シリウスでタルシアンに遭遇した国連軍は4隻の艦艇のうち3隻を失う激しい戦闘となり、物語は終わる。


作品理解のポイント

あらすじをよく理解する

一般に、名作アニメと言われる作品は、あらすじをきちんと追うのが少し難しいが、この『ほしのこえ』という作品も例外ではありません。最初の電車やビルのシーンは美加子の心の中のイメージであって、現実ではありません。現実は、シリウスの惑星アガルタの軌道上にいる美加子の姿です。その後は、回想シーンとなります。その回想シーンは、中学校の階段での会話の「一緒の高校に行けるね」という言葉から始まります。その後、中学時代の思い出が続く。メールを送る美加子と昇の高校時代、そして、大人になってからの姿が画面に映し出されて行きます。

映像と言葉の持つ意味の深さを考える

『ほしのこえ』の映像の巧みさは卓越していると思います。単にきれいなだけなら、絵がうまいと言うだけの話ですが、それではアニメとして全くつまらないです。映像が何を伝えられるかが問題となるわけです。例えば、美加子が昇と一緒に帰宅するシーンで雨に降られるシーンがあります。単に雨が降っていると言うことを伝えているだけなら、全くつまらないのですが、『ほしのこえ』のこのシーンでは、「なつかしさ」とか「心のあたたかさ」の様なものが伝わってきます。つまり降水量を表現した絵ではないわけです。そうした卓越した絵の使い方が、この作品のもつ意味の深さにつながっていると言えます。そして、二人の登場人物が話す言葉の深さをよく考える必要があります。例えば、冒頭の「一緒の高校に行けるね」と言う言葉一つを取っても、その後の展開の持つ意味を伝えるための重要な布石になっていることがわかります。

愛と孤独

新海誠の作品は、「愛と孤独」をテーマとする作品ばかりですが、この初期の作品にはその原点と言えるようなものがあるように思います。愛を描いたアニメ作品はいくらでもありますが、孤独を描いた作品は、そう多くはないです。孤独なしに愛を語ることはできないですから、本当に愛を深く描くためには、孤独を深く描く必要があるように思います。この作品では、美加子や昇の孤独が強烈に描かれていると思います。例えば、宇宙を旅する美加子が膝を抱えているシーンとか、アガルタの軌道上で美加子のトレーサーがたった一機でぽつんと浮かんでいる様とか、昇が携帯を持って、下をうつむいて、メールの画面を見ているシーンとか・・・。こういったシーンで重要になるのが音楽ですが、使われているピアノ曲がシーンによく合っています。最後に近いシーンで美加子が涙を流すシーンがありますが、そのシーンが感動的なのは、こうしたシーンの積み重ねがあってのことです。

最後に

愛を描いた作品は多く、愛というのは、テーマとして極めてありふれていますが、問題は、それをどう描くか、どこまで掘り下げているのかという点です。それなりの知的レベルにある私たちとしては、徹底的に深く描いてもらえないと、見る価値がないです。そう言う意味で、この作品は画期的な作品であり、真の名作といえるアニメだと思います。
2008年1月15日


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2008年1月15日 初稿
2013年6月2日 改訂(CSSによる行間補正、及び誤字訂正: 「愛を映画いた」→「愛を描いた」)

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