仙人の結界アニメと映画>吸血姫美夕 OAV版 作品解説

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吸血姫美夕 OAV版 作品解説

 仙人

話数と時間

『吸血姫美夕』(OAV版)は、4話からなるアニメです。1話30分弱ですので、連続で見れば、2時間以内に見終わります。

各エピソードの内容

第一話 妖の都(あやかしのみやこ)

霊媒師一三子(ひみこ)は、眠り続けて目を覚まさない娘、藍子(あいこ)を助けてほしいという藍子の両親からの依頼で京都を訪れる。その頃、京都では吸血鬼事件が相次いで起きていた。藍子の自宅を訪れた際に、まだ少女である藍子がその吸血鬼ではないかという疑念が浮かぶが、一三子自身がその吸血鬼らしい怪人に遭遇する。その時、一三子は、不思議な少女、美夕に出会う。美夕は、第一の犠牲者の恋人、都人(みやひと)の血を吸い、代わりに幻想の幸福と永遠の命を与える。それを目撃した一三子は美夕に美夕がバンパイアであることを告げられる。しかし、吸血鬼事件を起こしているバンパイアは美夕ではない別のバンパイアだと美夕は言う。藍子の身辺を調べた一三子は、かつて藍子とその両親が自動車の転落事故に遭い、藍子は両親の血を輸血されて一命を取り留めたが、両親の方はすでに死んでいることを知る。藍子の家で会った藍子の両親は幽霊だった。一三子は再び藍子の自宅を訪れ、藍子の枕元に座るが、藍子は目を覚まし、一三子に迫る。そこへ美夕が現れ、藍子の血を吸おうとする。一三子は、藍子を美夕から取り上げ、阻止する。藍子の体から吸血鬼事件事件の犯人である神魔・羅魘(らえん)が現れる。その神魔は、幻の両親と家と夢を提供する代わりに、藍子の命を吸い取ったと美夕は言う。美夕は、神魔を闇に帰すが、藍子は死んでしまっている。美夕は藍子が美夕の血を受けて、バンパイアになって生き延びれば良かったのにと言い残して、一三子の前から消え去るが、一三子は美夕を捜す決心をする。

第二話 操の宴(あやつりのうたげ)

ある学校で生徒が蒸発するという事件が多発していた。そんな中、美夕は、その学校の中等部に転校生として在籍していた。美夕は、その学校で柚樹桂(ゆずき けい)という男子生徒に心惹かれるが、柚樹桂は、爛佳(らんか)という神魔と恋愛関係にあることを知る。一方、一三子は、蒸発した女生徒を捜す仕事をその父親に頼まれ、その学校にやってくる。爛佳は、人を人形に変え、その命のエネルギーを糧(かて)とする神魔だが、柚樹桂だけは人形に変えようとしない。美夕は爛佳に近づき、その理由を聞き出そうとするが、永遠の美がほしいと言って柚樹桂が爛佳に近づいたのだと言って、爛佳は逃げてしまう。美夕は、柚樹桂に忠告し、永遠の美なら自分が与えると言うが、柚樹桂は、それを受け入れず、爛佳を愛していることを告げる。その様子を目撃した一三子は職員室に行くが、気がついた美夕がそこに先回りしていた。美夕は、一三子に自分とは関わらないように警告する。そして、自分の名前と自分に付き従う僕(しもべ)、ラヴァの名前を教える。一方、柚樹桂は爛佳に会い、美夕のことを話す。美夕は柚樹桂と爛佳の前に現れ、柚樹桂を爛佳から奪い取ろうと、爛佳と争うが、爛佳は柚樹桂を人形に変えてしまう。人形に変えられた柚樹桂を美夕は愛することができず、爛佳を闇に帰す。

第三話 脆き鎧(もろきよろい)

美夕は、ラヴァを封印されてしまい、一三子を訪れて、助けを求める。美夕の後について行くと、巨大な鎧(よろい)の怪人が現れる。自らを神魔と名乗る鎧怪人は、神魔は美夕に殺されなければならないと言って、美夕に襲いかかろうとするが、美夕は戦いを拒否し、一三子に戦いを任せる。一三子は陀羅尼(だらに)という仏教の呪文を唱えて、鎧怪人を追い払う。一三子は、美夕に美夕とラヴァについて詳しく聞こうとする。一方、鎧怪人は、神魔・レムレスに言われて、人間の家を焼く。一三子に聞かれた美夕は、海辺でラヴァに出会い、ラヴァの血を吸って、ラヴァが美夕の僕になったという話をする。美夕は、鎧怪人にそっくりの鎧の写真を一三子に渡し、鎧怪人について調べさせる。一三子は、あちこち調べて、その鎧がある家に渡ったことを突き止め、その家に行くが、その家は鎧怪人によって焼かれた後だった。その時、近くにいた警官から、その家の主人が病死し、妻が後を追って自殺したという話を聞く。その後、地下鉄の電車の中で一三子は青年に声をかけられ、写真の鎧があるという場所に連れて行かれる。しかし、そこへ鎧怪人が現れる。一三子は陀羅尼を唱えようとするが、後ろから青年に制止され、殺されそうになる。そこへ美夕が現れて、一三子を救う。美夕は、青年を神魔・レムレスと呼び、青年が神魔としての正体を現す。一三子は自分がおとりにされていたのに気づく。鎧怪人が美夕に襲いかかろうとするが、美夕は一人の男が妻に看取られて死んでいく様子を鎧怪人に見せると、鎧怪人は消えてしまう。振り返って、美夕はレムレスに対するが、レムレスは、自分はラヴァの友人であり、美夕からラヴァを解放しに来たと言う。美夕は、自分が血を吸ったからラヴァは自分のものであり、封印を解くことをレムレスに要求する。レムレスは拒絶し、戦いになるが、美夕はレムレスを炎で焼き尽くす。戦いが終わって安堵(あんど)したところに、鎧怪人が再び現れ、美夕を襲う。そこへ封印が解けて解放されたラヴァがやってきて、美夕を救う。美夕は、鎧怪人が神魔ではなく、人間であり、妻を残して、病死した男なのだと鎧怪人に告げる。しかし、鎧怪人は、それを認めず、建物を壊しながら、町の中を歩いていく。美夕が姿を消すと、鎧怪人は、武装した警官隊が自分の前に阻止線を張っていることに気づく。物陰から様子を見ていた一三子の背後に美夕が現れ、鎧怪人が、妻を残して病死した男であり、妻がレムレスに身を捧げることで生き返ったのだと言う。鎧怪人は、自分が人間であることを思い出し、自分が人間であることを警官隊に告げるが、警官隊に射殺されてしまう。

第四話 凍る刻(こごえるとき)

一三子は、幼少の一時期を過ごした鎌倉を訪れていた。昔の記憶をたどって、記憶にある屋敷があるはずの場所に行くと、そこには屋敷がなかったが、次の瞬間、その屋敷が忽然(こつぜん)と姿を現す。屋敷の中に入っていくと、美夕に出会い、そして、美夕の両親がガラスで満たされた部屋に逆さにつるされるようにして閉じこめられているのを見る。そして、美夕は自分がバンパイアの血に目覚める前の昔のことを話す。美夕は、その家が自分の家であったと言い、そこで親子三人で暮らしていた時のことを話す。ラヴァに出会って、はじめて血を吸ってから、血がほしくてたまらなくなり、学校で他の生徒の血を吸って殺してしまったと言う。それを目撃した友人が美夕の家を訪れ、美夕に血を吸って、永遠の命をくれるように頼む。しかし、母親に制止される。美夕は、母親がバンパイアであったことに気づく。美夕は、母親からコップに入れた血を渡され、人間なのだから、これを最後に血を吸うのをやめるように言われる。美夕は、血を飲むことを拒否するが、結局、血を飲んでしまう。血を飲んだ時、神魔の長老が現れ、監視者の引き継ぎを美夕と美夕の母親に命じる。自分は神魔ではなく、人間だと美夕は言い、それを拒む。美夕の母親は、美夕を助け、美夕を連れて、逃亡を図る。しかし、結局、母親の血を吸ってしまい、捕らえられてしまう。その結果、美夕と母親の逃亡を利用して、闇から抜け出した神魔をすべて闇に帰すまで、両親は解放されず、自分の時も止められたと美夕は言う。話し終わると、美夕は一三子の前から姿を消す。一三子は、昔の記憶をさらに思い出していき、昔、幼少の頃、その場所で美夕に出会ったことを思い出し、その時の美夕が今の美夕と全く同じ姿であることに気づく。


作品理解のポイント

美夕の心情理解の布石を知る

この作品を理解するには、最終話以前の第一話から第三話までの3話が美夕の心情を理解するための布石になっていることを認識することが重要です。つまり、単に何か事件が起きて、美夕が活躍したと言うような単純な話ではなく、すべて美夕の心情を理解するためのストーリーだということです。例えば、第一話の藍子は、親の血を吸って生き延びていますが、それは、そのまま美夕自身に当てはまる話ですし、第三話も同じく、妻が自らを犠牲にしてくれたために自分だけがこの世に生き返ったという鎧怪人は、美夕の場合とよく似ています。第二話では、美夕が人間的な弱さを見せ、心の中は人間と変わらない点を描き出しています。美夕の心情は人間のそれと本質的に同じですので、第一話と第三話で藍子と鎧怪人の心情を理解することにより、美夕の心情が理解される様にストーリーができているわけです。

幻想的で、美しく、余韻のある映像表現

作品のタイトルから、よく工夫されていて、美しさがよく表現されていると思います。美夕の体の動きは優雅で、美しく、幻想的で、それがもの悲しい雰囲気をうまく醸(かも)し出しています。あのようなもの悲しい雰囲気を、こういう形で表現できたことは驚くべきことです。アニメや映画の歴史で初めてのことではないかと思います。実際、後にも先にも類例は他には見あたりません。

音楽の効果的な使用

美しい映像を使って、もの悲しい雰囲気を醸し出すのに、音楽が非常に役立っていると思います。もし映像だけで、音楽がなかったり、雰囲気に合っていない音楽が使用されていたとしたら、全くうまく行っていなかったに相違ありません。映像と音楽、そして、効果音の適切な組み合わせが、成功したと考えられます。

全部は言わずに含みを持たせる言葉

せりふを見ていくと、作品中、美夕ははっきり全部言わないことが多いのですが、それが美夕の心情を感じ取るのに役に立っています。言葉にならない気持ちの微妙なところが、言わないと言うことによって、より強く印象づけられます。例えば、最終話の最後に近いところで、「一つだけ言ってあげたいことがあるの、お母さんに」と美夕は言いますが、その後に一三子に「何を?」と聞かれても、何も答えません。美夕の答えは、だいたい想像されますが、それを言わないと言うところが、感情の表現になっていると言えます。

テーマの普遍性と深さ

どんなによくできた話でも、その話に固有のものであって、他には関連性を感じられないようなテーマでは、あまり理解されないわけですが、美夕の悲しみや苦しみは、普遍性が高いため、多くの人にとって理解しやすいと言えます。しかも、それを直接、言葉にして表現せず、また、特に表にも出していないため、単に悲しい、苦しいというだけでなく、二重構造のような複雑な心情を表現していると言えるかもしれません。同時にこれがこの作品のテーマの深さを感じさせる要因だと考えられます。

最後に

『吸血姫美夕』(OAV版)というアニメは、せりふを一言一言よく考え、映像をしっかり見て、音楽や効果音にも十分注意して鑑賞すると、その内容の深さがよく理解できる作品だと思います。あらすじだけを追ったのでは、この作品を理解したとは全く言えないでしょう。
2006年5月5日


注: 『吸血姫美夕 OAV版』は『吸血姫美夕 OVA版』と同じものですが、『吸血姫美夕 TV版』や『吸血姫美夕 Integral版』とは異なります。


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2006年5月5日 初稿






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